燃料電池

出典: くみこみックス

燃料電池(ねんりょうでんち)

 メタノールなど,水素を豊富に含む「燃料」から直接,電流を取り出す1次電池.従来,自動車用や病院/工場の予備電源用に開発が進んでいたが,携帯電話やノート・パソコンなどへの応用に向けて研究開発が進んでいる.原理的に水素を豊富に含む物質なら,天然ガスやガソリンでも燃料として使え,しかも燃やすわけではないので有害な排気ガスを出さない.また,NiCd(ニッカド)電池やPb(鉛)蓄電池のように重金属や有害物質を使わないなど,クリーンな電源として注目されている.燃料電池の原理は,水の電気分解の逆反応で,メタノールなどの物質から水素を取り出し,空気から取り出した酸素と結合させる過程で電子を放出させ,電流を取り出すというもの.燃料に含まれる水素は,触媒のPt(プラチナ)を通して陽子と電子に分解される.このうち,電子は陰極に導かれ,残った陽子は空気から取り出した酸素と触媒を介して結び付き,水を生成する.効率を高めるため,触媒粒子の粒経を可能な限り小さくして表面積を稼ぐ,反応速度を高める,陽極側に燃料のメタノールが浸透しにくくする,などの工夫が必要.電極材料にカーボン・ナノホーンを使い,触媒粒経の超微小化に成功したNECや,電解質膜にフラーレン60を使って画期的な効率を得たソニー,燃料の浸透を1/10に抑える独自材料を開発した日立製作所など,日本企業の活躍が目ざましい.出力電圧が低い(0.3〜0.4V)ため,2次電池などとの併用や,生成した水の処理といった課題も残っている.

【出典】Interface編集部 編;組み込み技術用語集,Interface 2007年8月号 別冊付録,CQ出版社,2007年8月.

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