高調波ひずみ率

出典: くみこみックス

2009年1月29日 (木) 06:32; Worker (会話 | 投稿記録) による版
(差分) ←前の版 | 最新版を表示 (差分) | 次の版→ (差分)

高調波ひずみ率(こうちょうはひずみりつ)

 信号増幅や信号伝送において,振幅の部分的な場所によって増幅率/減衰率が異なると,出力波形は入力波形に対してひずんでしまう.高調波ひずみ率は,サイン波のもつ性質を使って増幅や信号伝達の過程における直線性を表す値である.全くひずみのない線形な回路に対して,例えば1kHzのサイン波,すなわち1kHzの線スペクトラムをもつ信号を入力すると,出力からは1kHzのサイン波だけが出てくる.ここで経路にひずみのある非直線な回路では,1kHzの信号を入れただけなのに,2kHz,3kHzといった高調波成分が付加されて出力される.そこで,1kHzの基本波成分と高調波成分の2乗平均の比率をとって,それをパーセント表示したものが全高調波ひずみ率である.

 特別なn番目の次数の高調波に対する基本波との比率を,第n次高調波ひずみ率という.奇数次の高調波ひずみは波形の上下が対称にひずんだ場合に,偶数次の高調波ひずみは波形の上下が非対称にひずんだ場合に発生する性質をもつ.ひずみ成分を観測する簡単な方法は,基本波成分を取り除くノッチ・フィルタを使って出力信号を観測することである.スペクトラム・アナライザを用いて,出力に現れた信号のスペクトラムを観測して高調波成分を求めることもできる.

 ひずみ率は直線性を示すものなので,ひずませてしまった信号でも,もう一度逆の非直線性を適用すれば復元する.SN比と異なり,一度劣化させてしまうと復元できないものではない.

【出典】Interface編集部 編;組み込み技術用語集,Interface 2007年8月号 別冊付録,CQ出版社,2007年8月.

表示