スルー・レート制限
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スルー・レート制限(スルー・レートせいげん)
スルー・レートとは,信号波形の電圧または電流の立ち上がりの速さ,すなわち傾きdv/dt,di/dtを示す値である.増幅器などの応答速度は有限なので,出力できる信号波形の傾きにも限界があり,これが出力可能な振幅や周波数の限界を決定する一つの要因となる.周波数f[Hz],最大値vm[V]のサイン波vm sin(2πft)の最大の傾きdv/dtは,ゼロを横切るときに最大になり,その値は2πfvmである.傾きの最大値は周波数と振幅の両方に比例している.そのため,限られたスルー・レートの中で表現できる信号は,振幅が大きくなるほど出力できる周波数上限が低くなり,逆に周波数が高くなるほど振幅が小さくなる.もし,この限界を越えた周波数/振幅になるとサイン波は傾きの制限から三角波状に変形してひずむようになる.OPアンプにおける出力電圧のスルー・レート制限は,アンプ内部のキャパシタンスを充放電する電流値によって制限される.内部の差動アンプや能動負荷をもつ電圧増幅段は定電流源によって電源の供給を受けているから,定電流回路の出力電流で決まる値より大きな電流を流すことができない.その結果,内部のキャパシタンスを充電する速度が制限される.差動アンプや能動負荷を用いない電流帰還型のOPアンプでは,内部の電流が帰還された電流によって決まるので,電圧帰還型に比べて非常に大きなスルー・レートが得られる.
【出典】Interface編集部 編;組み込み技術用語集,Interface 2007年8月号 別冊付録,CQ出版社,2007年8月.